俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
ふたりで過ごす最後の夜
ふたりで過ごす最後の夜
「できた……」
私は完成した書を持ち上げ、ため息を吐き出す。
部屋の畳の上は、いくつもの色紙で埋め尽くされていた。
これで中村さんから依頼されたものは全て書き上げた。
いくつもの習作を重ね、役場の人たちやデザイナーさんと相談しながら、ようやく納得のいく字を書きあげた。
二週間弱の納期で慣れない仕事をやり遂げるのは大変だったけれど、胸の中は充実感と達成感でいっぱいだ。
墨がしっかり乾いたのを確認してから、慎重に色紙をファイルにしまう。
約束の期限は明日だけど、高揚感でじっとしていられない。
今から届けに行こうと立ち上がった。
「貴士さん。私、ちょっと出てきます」
とんとん、と引き戸をノックして、自室で仕事をしている貴士さんに廊下から声をかける。
すると部屋の中から立ち上がる気配がして引き戸が開いた。