俺様社長と<期間限定>婚前同居～極上御曹司から溺愛を頂戴しました～

「そうでしょう？　依頼してから二週間って無茶ぶりでお願いしてしまったんですが、さすが書道の先生。短期間でもしっかり完成させてくれて……」

　明るく言った課長さんに、農家の奥さんが「二週間じゃないですよね」とつぶやいた。

「え？」
「実際に書いたのは二週間だったとしても、今まで気の遠くなるくらい長い時間、真摯に筆を持ってきたから、こんな素敵な字が書けるんですよね」

　ひとりごとのようなつぶやきに、なにかが胸にせまってきた。
　ぐっと呼吸が苦しくなる。

「私たち、結婚してからこちらに移住してきたんです。知識ゼロの状態から農業をはじめて、土づくりに種の選び方に水のやり方。全て試行錯誤の繰り返しで、安定して納得のいくものが作れるようになるまで、何年もかかりました」

　奥さんの言葉に旦那さんも深くうなずく。