俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 一ヶ月の間に当たり前になっていたこと全て、もうできなくなってしまうんだ。

 さっきまでの嬉しかった気持ちがどんどんしぼんでいく。
 貴士さんのいない生活を想像すると、勝手に涙がこみあげてきそうになる。

 私はとてもわがままだ。
 この家と書道教室を守ると決めたのは自分なのに、それが私の使命だと思っていたのに、いつの間にかひとりの生活をさみしいと感じるようになっていた。


 私が居間に入ると、縁側でシマノさんが寝ていた。
 私の気配に気づいたシマノさんは、ぴくんと片耳を震わせこちらを見る。

 そのまま庭に降りて去ってくかと思ったけれど、シマノさんは自分の毛皮に鼻先をうずめお昼寝を再開した。

 その姿を見て苦笑する。

 以前はこんなふうに縁側でくつろいだりしなかったのに。
 猫の扱いがうまい貴士さんにかわいがられているうちに、シマノさんもほだされてしまったようだ。

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