俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 そのまますぐに縁側から庭に降り、あっという間に生け垣の向こうに消えていく。

 どうしたんだろうと不思議に思ってふりかえると、そこには貴士さんが立っていた。

「貴士さん……」

 こちらを見つめる険しい視線に、戸惑いながら名前を呼ぶ。

「綾花。どうして泣いてるんだ」
「ええと、これは。ご、ごみが目に入って」

 苦しい言い訳をして背を向けると、貴士さんは広い歩幅でこちらにやってきた。
 私の肩をつかみ、強引に自分の方を向かせる。

「本当に、素直じゃないな」

 貴士さんは苛立った口調で言って、私を抱きしめた。

「電話の会話を聞いていたのか?」
「ええと……」
「俺がいなくなるのがさみしくて、泣いていたんだろ」

 シマノさんとの会話を聞かれていたんだ。ぶわっと頬が熱くなる。

『違います』と首を横に振ろうとしたけれど、たくましい胸に顔を押し付けられ言葉が出なくなる。

< 219 / 297 >

この作品をシェア

pagetop