俺様社長と<期間限定>婚前同居～極上御曹司から溺愛を頂戴しました～

　でも、貴士さんが私の部屋に来たとこなんてなかったから、私は夢だと思っていたのに……。

　私は混乱しながらあのとき見た夢を思い返す。






　あの日、貴士さんと姉の婚約にショックを受け私は熱を出した。

『――綾花』

　私が部屋で寝ていると、低く甘い声がした。
　うっすらと目を開くと貴士さんが長身をかがめ、ベッドで眠る私をのぞきこんでいた。

『貴士さん……？』

　どうして彼がここにいるんだろう。

　私は不思議に思いながら、熱のせいでぼんやりした視線を貴士さんの整った顔に向ける。
　そして、私は夢を見ているんだと気づいた。
　これは自分に都合のいい、身勝手な夢だ。

　だってそうじゃなかったら、貴士さんが私の部屋にやってくるはずがない。

　夢の中の貴士さんは、汗ばんだ肌にはりついた私の前髪を長い指でそっと払い額に触れた。