俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 それから向かったのは、貴士さんの部屋。
 引き戸をそっとノックして、「貴士さん、いいですか?」と小さな声で呼びかけた。

「どうした?」

 すぐに戸を開けてくれた貴士さんに「少しお話がしたくて」と言うと、彼は微笑んで部屋に入れてくれた。

 和机の上に置かれたパソコンやプリンター。通信機器やいろいろな書類。この一室が、すっかり貴士さんの居場所になっていた。
 彼ももう寝る支度をすませていて、部屋には布団が敷いてある。

「今日はすみませんでした。突然姉がやってきて、さわがしくして」
「綾花が謝ることじゃないだろ」
「そうなんですけど、なんだか色々中途半端になってしまったので」

 そう言うと貴士さんは苦笑する。

「確かに。ようやく綾花を抱けると思ったのに、まさか邪魔が入るとは思わなかった。しかも明日からしばらく東京に戻らないといけないし……」
「そのことを話したくて」

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