俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 寝ぼけ顔で起きてきた姉と一緒に朝食を食べ、貴士さんと姉は東京に帰る支度をはじめた。

「渚沙も帰るなら俺の車に乗っていくか?」

 貴士さんが声をかけると、姉は「駅弁とビールを買って、のんびり電車で帰るからいいわ」と首を横に振る。

 タクシーを呼び到着するまでの間、姉は古い家を見て回る。
 そして、廊下に飾られた書の前で足を止めた。

「これ、いい書よね」

 姉は『行雲流水』と書かれた掛け軸を眺めながら微笑む。

 それは、私が高校生のときに書いたものだ。
 長鋒の羊毛筆を使い、一気に書き上げた。

 生前、祖父はこの書がとてもお気に入りで、掛け軸にして玄関から入ってすぐのところに飾ってくれていた。

「ありがとう」と少し照れながらお礼を言う。

「久しぶりに来たけど、ここは本当に居心地のいい家ね」

 姉は廊下から続く居間と明るい庭をながめ、目を細める。

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