俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
「え……?」
「生前おじい様は、僕を通してこの家や残した書作を町に寄贈できないかと相談していました。とても立派な日本家屋だから、観光案内所や町の人が集える寄り合い所のようなものにできないかと」
「でも、おじいちゃんは亡くなる前に私にこの家を任せるって……」

 とまどいながら祖父との最後のやりとりを思い返す。

 祖父はベッドの上でせき込みながら、『あの家は全て、任せる』と言っていた。

 けれどあれは私にではなく、中村さんに任せて町に寄贈するから、私は気にしなくていいという意味だったのだろうか。

 急にそんなことを言われてもとても信じられなくて、私は「でも」とつぶやく。

「この家には綾花さんの書が飾ってありますよね」

 そう言われ、私は振り返る。

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