俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
「書道教室に通っていたころからずっとかわいいと思ってきた女の子が、綺麗な大人の女性になってまたこの町に戻ってきて、うれしかったんです。もしおじい様の本当の気持ちを知ったら、綾花さんはまた手の届かないところに行ってしまうと思って言えなかった」

 中村さんは一度大きく息を吐きだすと、姿勢を正してこちらを見る。

「今更遅いってわかっていますが、それでも言わせてください。僕は、綾花さんをずっと……」

 中村さんがそう言いかけたとき、広い家に大きな音が響いた。
 ジリリリリーン!という黒電話のベルの音だ。

 大きな音に驚いて私が一瞬動きをとめると、中村さんが「どうぞ、気にせず電話にでてください」と苦笑いしながら言った。

 居間に戻り受話器を取ると、聞こえてきたのは切羽詰まった姉の声だった。

『もしもし綾花? 貴士からなにか連絡はきた?』
「え? 貴士さんがどうかしたの?」
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