俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 緊張で言葉もでない様子が、かわいくて仕方ない。

『顔が赤いけど、具合でも悪いのか?』

 綾花はまた黙ったままぷるぷると首を振った。
 その表情を見て、もっとからかってみたい。そんな意地悪な気持ちになる。

『本当に?』

 心配するような声で優しく問いかけながら、体をかがめ綾花の顔をのぞきこむ。
 俺を見つめる綾花の大きな瞳がうるんでいく。

 黒い瞳のふちに透き通った涙がたまっていく。
 それがとても綺麗だった。
 俺以外の人間に、この綺麗な瞳を見せたくない。そんな独占欲がわき上がる。

『そうやって泣くのは、俺の前だけにしとけよ』

 綾花の涙を指でぬぐい、そうささやいていた。

 引っ込み思案な綾花にかまいたいと思うのは、自分が向ける先のない庇護欲を持て余しているからだ。
 俺には兄弟はおらず、母が動物アレルギーを持っていたのでペットも飼えなかった。

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