俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 綾花は唇をかみしめながら『私のせいでこの賞や葛西家まで悪く言われるのは、悔しいです』とつぶやいた。

 意外な言葉に思わず眉を上げる。

 自分よりも、他人を貶められたことに怒っている。
 彼女の芯の強い一面を見て、胸が高鳴った。

 そのとき俺は、綾花を好きなんだと自覚した。

 そしてそれからしばらくして、父から婚約の話を聞かされた。


 その相手は綾香ではなく姉の渚沙だった――。
 



 



 そんな過去のやりとりを思い出し、懐かしい気持ちがこみあげてきた。

 俺と渚沙との婚約が発表されてから二年。
 その間に色々なことがあったけれど、俺の覚悟を父親に認めてもらい、ようやく綾花を迎えに来た。

 見事な八重桜が咲き誇る古い日本家屋の前で、若葉色の着物姿で佇む綾花を見たとき、一瞬息が止まった。
 二年ぶりに再会した彼女は、とても美しく成長していた。

< 79 / 297 >

この作品をシェア

pagetop