荒野を行くマーマン
「えっと…じゃあ、まずは端末を立ち上げてみましょうか」
部長が去ってから、私の右隣に位置する席に彼を腰掛けさせ、さっそく研修を始める事にした。
私が勝手に考えたメニューではなく、前もって課長から「こういう流れで教えてやってね」と渡されたマニュアルに沿って行うのである。
「電源を入れると一番最初にこの画面になって、指紋認証とパスワード入力が必要になるんですけど…。それに関してはご存じですよね」
「はい。以前の部署でも端末のシステムは同じでしたから。こちらに異動するにあたり、指紋とパスワードは新たに登録し直しましたけど」
「それなら大丈夫ですね。では同じように操作してみて下さい」
「はい」
指示に従い、キビキビと動き出す彼を見つめながら私は胸中安堵のため息を吐いていた。
この分なら私でも、何とか教育係としてやって行けそう。
任命された当初はどうなる事かととても不安だったけれど。
自分自身のスキルはもちろんのこと、相手との距離の取り方が。
異動になった理由が理由だし、下手したらすごくなげやりだったりやさぐれていたりするんじゃなかろうか、私の言うことに素直に耳を傾けてなんかくれないんじゃないだろうか、なんて考えていたのだ。
でもそんなのはまったくもって杞憂であったとすぐに認識できたけど。
ほんの数分接しただけでも、とても真面目で穏やかで礼儀正しい好青年である事が伝わって来た。
部長が去ってから、私の右隣に位置する席に彼を腰掛けさせ、さっそく研修を始める事にした。
私が勝手に考えたメニューではなく、前もって課長から「こういう流れで教えてやってね」と渡されたマニュアルに沿って行うのである。
「電源を入れると一番最初にこの画面になって、指紋認証とパスワード入力が必要になるんですけど…。それに関してはご存じですよね」
「はい。以前の部署でも端末のシステムは同じでしたから。こちらに異動するにあたり、指紋とパスワードは新たに登録し直しましたけど」
「それなら大丈夫ですね。では同じように操作してみて下さい」
「はい」
指示に従い、キビキビと動き出す彼を見つめながら私は胸中安堵のため息を吐いていた。
この分なら私でも、何とか教育係としてやって行けそう。
任命された当初はどうなる事かととても不安だったけれど。
自分自身のスキルはもちろんのこと、相手との距離の取り方が。
異動になった理由が理由だし、下手したらすごくなげやりだったりやさぐれていたりするんじゃなかろうか、私の言うことに素直に耳を傾けてなんかくれないんじゃないだろうか、なんて考えていたのだ。
でもそんなのはまったくもって杞憂であったとすぐに認識できたけど。
ほんの数分接しただけでも、とても真面目で穏やかで礼儀正しい好青年である事が伝わって来た。