夏色剣士
竹刀と竹刀がぶつかる音が、この会場に響く。
今日は、私の双子のお姉ちゃんである真夏(まなつ)の剣道の試合の日。
「真夏、かっこいいなぁ……」
観客席から真夏が戦っている所を見ながら、私は呟いた。
「胴あり!」
……あ、真夏が勝った!
試合が終わったあと、私は会場の入口で真夏が来るのを待つ。
「初夏(ういか)~!」
明るい声が、聞こえてくる。声がした方を向くと、真夏が明るい笑顔で私に手を振っていた。
「優勝おめでとう」
私が微笑むと、真夏は「ありがと」とはにかむ。
「さ、帰ろうか」
私は、そう言って歩き始めた。
「おはようございます!」
荷物を置いて、私は2階にある日誌に目を通す。
私は今、実家の近くにある介護施設で働いているんだ。私が配属されたのは、2階。この施設は三階建てで、認知症の重度によって分けられてるんだ。
「河合さん!どうしたの?」
職員の長崎さんは、車イスから立ち上がったアキさんに話しかける。
「……アキさん、今日も元気に立ち上がってるな……」
アキさんの様子を見ながら、私は呟いた。
「そうなんだよね。ミサはミサで、大学芋食べたい言ってる」
「相変わらずか……。私がミサさんを離床に言った時は、プリン食べたいって言って、私の名札を握り潰してたよ。ミサさんを介助するときは、名札は外した方が良いかも」
今日は、私の双子のお姉ちゃんである真夏(まなつ)の剣道の試合の日。
「真夏、かっこいいなぁ……」
観客席から真夏が戦っている所を見ながら、私は呟いた。
「胴あり!」
……あ、真夏が勝った!
試合が終わったあと、私は会場の入口で真夏が来るのを待つ。
「初夏(ういか)~!」
明るい声が、聞こえてくる。声がした方を向くと、真夏が明るい笑顔で私に手を振っていた。
「優勝おめでとう」
私が微笑むと、真夏は「ありがと」とはにかむ。
「さ、帰ろうか」
私は、そう言って歩き始めた。
「おはようございます!」
荷物を置いて、私は2階にある日誌に目を通す。
私は今、実家の近くにある介護施設で働いているんだ。私が配属されたのは、2階。この施設は三階建てで、認知症の重度によって分けられてるんだ。
「河合さん!どうしたの?」
職員の長崎さんは、車イスから立ち上がったアキさんに話しかける。
「……アキさん、今日も元気に立ち上がってるな……」
アキさんの様子を見ながら、私は呟いた。
「そうなんだよね。ミサはミサで、大学芋食べたい言ってる」
「相変わらずか……。私がミサさんを離床に言った時は、プリン食べたいって言って、私の名札を握り潰してたよ。ミサさんを介助するときは、名札は外した方が良いかも」
< 1 / 9 >