夏色剣士
「……」

私は、部活で散々比べられた。「真夏の方が強い」とか「双子なのに、この差は何?」とか言われ続けてきた。

3年生になっても大会に出れないほど弱かった私は、団体戦で大将を任されるほど強かった真夏が羨ましかった。

「……違うよ。初夏は、弱くない。私、知ってるんだ。初夏が大会に出れなかった理由……先生がね、わざと初夏をレギュラーから外してただけなんだ。本当なら、初夏は副将か大将になっても良いくらい強いんだよ」

それでも、と私が言いかけると、真夏は「もう少し自分に自信を持って。介護の時みたいにさ」と私を見つめたまま言う。

あ、そっか……私、一回だけ家族の前で近所のおばあさんを介助したことあったっけ。そのおばあさん、認知症があって、徘徊してたから……。

「……」

真夏の言葉に、私は俯いた。

「本当は、剣道がしたいんでしょ?」

「……うん。したい」

私は真夏の言葉に、素直に頷いた。



私は主任に事情を話して、半日にしてもらい、昼からは剣道の練習に打ち込んだ。

色々と体が覚えててくれたから、すぐに感覚を取り戻すことが出来た。

それに発作が出ることもなくて、チームの皆は、良く私に「大丈夫?」って聞いてくれるんだ。
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