蓮華草
まるで大きな猫みたいだ。
今日でお別れになるなんて、
そんな気配を微塵もさせずに目を細めている。

「本当に、綺麗だね」

ぽたぽたと涙が滑り落ちていく。
泣き出してしまった私の姿に
慌てて春が自分の袖で涙を拭ってくれる。

「いや、だった......?」
「そんな訳ないよ、これは嬉し涙なの」

しょんぼりとした彼の声に
安心させるように笑顔をつくってみせた。
すぐそばにいる彼の体に思い切って抱きついてみる。
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