蓮華草
「沁みるだろうけど、我慢してね」

消毒液でガーゼを湿らせて
そっと私の頬の傷に当てる。
思ったよりも深い傷だったのか
すぐにガーゼは赤く染まっていく。
何度かそれを繰り返した頃、ガーゼをサージカルテープで止めて手当てが終わった。

「そんな顔、しないで」
「っ、どんな、顔?」

口の端を釣り上げた春の表情の方が
私の傷より痛ましくて
安心させたくて真昼にしたのと同じように背中を撫でる。
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