蓮華草
静寂を裂いたのは、ようやく泣き止んだ真昼の声だった。
こういう時に頼りになる彼女の事を、
本当にありがたく思う。

「そうだよ、春。
話をしてくれて、私も嬉しかった。
ありがとう」

春がやっと顔を上げる。
出会ったあの日と同じ、泣きそうな顔で。
彼があの日に何故そんな顔をしていたのか、
初めて理由が分かった気がした。
きっと、自分の前で傷つく人を見たくなかったんだ。
理由はなんであれ、ご両親のように自分から離れていって欲しくなかったんだ。
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