蓮華草
思い出さなきゃ、前に進む為に。
ずっと囚われたままだった。
あの日から進めなかった。
窓の外で揺れる、微かに残った葉桜の花びらが思い出をなぞり返す。

「───────丁度、こんな季節だった。
お花見をしてた時、
たまたま私がお使いに行った時、
戻ったらお父さんとお母さんが倒れてて
血が、血が沢山......流れてて
飲酒した人が乗ってた車に轢かれたみたいで
救急車が来たけどっもう、だめだった」

すっと視界が暗くなった。
春が私を抱きしめているようだった。
溢れ出た涙がぽたぽたと床に落ちていく。
滲んで床の板目がみえない。
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