蓮華草
「春」

言いたくても言えない。
今なら言っても届かない。
それならいっそこの月夜に全てを聞いてもらおうか。
そう思いはしたものの、
いざ言葉に出そうとすると照れくさくて言葉にできない。
恋する乙女そのもののようで自分が嫌になる。

「──────────美蓮!!!」
「へ?」

居るはずのない声に体を固まらせた。
そんな訳がないと首を勢いよく横に振るも
大きな足音と共に青年がこちらに駆けて来る姿を目にしてしまって
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