蓮華草

悲しい理由

「この度、宮本春が転校することになった」

朝のホームルームで担任から伝えられた言葉は、すぐに学校中に広がって皆をざわつかせた。
あぁ、嫌な予感が的中してしまった。
春の言っていた事はこういう事だったのか。
放課後、質問攻めに合っている春を知らんぷりして教室を抜け出して保健室に駆け込んだ。
放課後の保健室はいつもと同じように無人で、私は空いたベッドに倒れ込む。

「はる......春っ」

触れた唇の感触を今でも覚えている。
溢れ出た涙が白いシーツに染み込んで溶けていく。
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