蓮華草
手短にお礼だけいって立ち上がり
廊下を駆け出す。
途中で何人もの先生に止められそうになったが全部無視して
全力疾走で体育館にたどり着く。
入口に人混みがある。

「来てくれたんだ」

その中心にいた青年はこちらを見るなり
人混みを振りほどいて駆け寄ってくる。

「置いていくわけ、ないじゃん馬鹿......」

私のその言葉に、春は嬉しそうにしながらも
一瞬だけ眉を寄せる。
"泣いてた?"なんて頬を撫でられるものだから
慌てて涙の跡を袖で拭った。
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