蓮華草
「ここじゃあ人がいるから、
行こうか」
「えっちょっ」

青年が急に私の手を取って廊下を走り出す。
ついさっき走ってきたばっかりなのに、
息が切れて苦しくなってしまうが
走っているその道がキラキラして色鮮やかな光景に見えた。
握りこまれている腕が熱い。
春の背中を見上げながら、全く解ける気配のない手に、
やっぱり彼も男の人なんだな、と実感する。

「はぁ、結構走ったね。ごめん、大丈夫?」
「だいじょ、うぶ。」
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