蓮華草
やっとの事でたどり着いたのはあの屋上だった。
あんなにドタバタ走ってきたのに、
ここまで誰にもバレなかったのが凄い。
切らした息を整え終えた頃、
漸く掴まれていた腕が開放される。

「ごめんな、昨日の今日ので勝手に呼び出して。今日呼んだのは、俺が引っ越すことになった理由を聞いて欲しかったのと
それから......その、先に行かれて寂しかったのとだな......」

昨日の今日の。
そうだった。私、昨日春に告白されて
それから謝られて、キスまでしたんだった。
思い返すと急速に体が火照って顔が赤く染っていくのが分かった。

「理由、教えてくれるの?」
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