蓮華草
"だから俺達は離れた方が幸せなんだ"
悲しげな顔で無理やり笑顔を作っているのが分かる。
そんな顔をするぐらいなら、そんな事言わないで、そばに居てよ。
手のひらで包んでいた手を離して、今度は彼の両頬を包んで目を逸らせないように固定した。

「離して。こんな顔見られたくない」
「嫌だ」

ビードロのように透明で、澄んだ双眸と見つめ合う。
しばらく見つめていると、徐々に瞳が潤んで
ボロボロと大粒の涙を零し始め、
瞳の中に映り込んでいた私の姿がぐにゃりと歪む。
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