蓮華草
なんて温かくて綺麗な涙なんだろう。
手に滑り込んでくる雫の感触にそう思った。

「あと、1週間で俺は転校するんだ。
俺は皆を、美蓮を置いていくんだ。
だから......っ一緒にはなれない、から、
せめて。
その1週間の時間を俺に頂戴」

懇願する青年に首を横に振った。
違う。たった1週間だなんて言わないで。
残された時間が少ないのは分かってるけれど
これが別れなんてそんなの嫌だよ......

「1週間も、1週間後も。
私の時間、全部春にあげる。
離れていても離さないんだからっ
絶対、絶対離さない。離してなんかあげない」
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