ByeBye
だけど、どうしたって現実は甘くなかった。
これから高校生になる樹が自分1人でどうこうできるお金ではなかったから、あたしたちも医者も必至になって、入院費やこれから樹にかかるお金も全部、元父親である和臣さんが負担するということを全面に伝えた。
なかなか首を縦に振らなかった樹だったけど、樹だって本当は分かってたと思う。
自分一人じゃどうにもできないということを。
「…絶対、返すから」
そう言って樹はようやく首を縦に振った。
和臣さんは、本気で全額返してもらおうなんて思ってはいなかった。
むしろ全額負担する気でいたのだ。
だけど、頷かなければきっと樹はお金を受け取ってくれない。
高校生になって、普通に学校生活を楽しんで欲しい。
────それは、和臣さんの父親としての思いだった。
結局、全額返すという条件を飲んで彼を援助することになった。
それからというもの、恵さんの入院生活が終わる気配はなく、聞いたところによると、樹の春休みはバイトとお見舞いで終わったらしい。
樹は無事高校生になれたと、和臣さんから聞いた。もちろん、あたしも。