ByeBye




入学式から数日たったある日。

あたしは中学の時から付き合っている彼氏、春川柚生と登校していた。




「友達できた?」

「あー、なんか話し合うやつはいた」

「へえ?よかったね」

「ん」



いつも通りの会話。何も変わったことはない。
あたしたちは、高校生活を普通に楽しむ…はずだった。




「…あ。あいつだよ」




あいつ、と言った柚生の視線を辿ったあたしの心臓は、その先にいた人物を見た途端ズキズキと痛み出した。



あの日以来見ていなかった綺麗な顔立ち。

それは紛れもなく、彼だった。





「え…」



思わず声を洩らしたとほぼ同時に、彼がこちらに気づいて同じように動きを止めた。



「…どうかした?」


固まるあたしと樹に気づいた柚生が小さく問うたのが聞こえたけど、その言葉はあたしの耳を突き抜けていった。


あたしと樹の間に沈黙の時間が流れる。



…本当、世間って狭い。

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