ByeBye
何気に樹と2人になることは少なかったから、少し緊張してしまう。2人並んで歩きながら、あたしはさっきのことを聞くことにした。
「樹、好きな子いるんだ?」
「っ聞いてたのかよ…」
バッとあたしのほうに振り返った樹の耳は、火照っていた。
こんなに動揺する樹を今まで見たことがなかったあたしは、この際全部聞いてしまおう、と質問を重ねた。
「同じ中学校の子?」
「…なんでお前にそんなこと、」
「いいからいいから。で?どうなの?」
「…そうだよ、」
樹は眉間に皺を寄せながらも、あたしの質問にちゃんと答えてくれた。
1年生の頃から、ずっと好きだったらしい。2年生の時同じクラスになって、しかも隣の席という運命。名前はユナというらしい。
卒アルとか写メとか、そういったものは見せてくれなかったけれど、どうやら相当可愛いとか。彼女の話をするとき、彼は本当に愛おしそうに笑っていた。
こんな樹の笑顔は、見たことが無かった。
「会えばいいじゃん」
樹の話を聞きながら、率直に思ったことを言った。無神経すぎたかな、なんて思ったりもしたけど、そんなに好きなら会えばいいのに。…単純にそう思った。