ByeBye
恵さんが亡くなってからいっそう、樹は借金を返すために必死だった。
何度もお金のことはいいって言ってるのにやっぱり聞き入れようともしない。
彼はもう、とっくに“普通”じゃなかったのかもしれない。
男達に声をかけられた時点で、樹の中ではもう決めていたんだと思う。そうして彼は、年齢を偽ってホストになった。
「…俺にはもう、何にもないから」
どうしていいかわからないまま黙るあたしたちに、樹はそう言って苦しそうに笑った。
このままだと彼は全部を背負いすぎて、壊れてしまうんじゃないだろうか。
そんな苦しい笑顔、見たくないのに。
「…この仕事がどういうものかわかってる?」
「…わかってる、」
「じゃあどうして…っ」
「…ごめん、」
「なんで樹はっ、…いつも自分で自分を苦しめるの……っ」