ByeBye
「有那、っ」
そんな私に、頭上から低く落ち着いた声が届く。頬に伸びた彼の大きな手が、私の頬を優しく包みこみ、ぐいっと親指で零れた涙をぬぐう。
「…誰にきいたの?」
「…唯乃さん、から」
「…俺のために?」
「…ん、」
「…そっか、」
涙を掬いながら、彼は少し目を細めて、ほんの少し笑うとそっと私を抱き寄せた。
「もう我慢しなくていいんだよ、」
彼の肩が揺れた。
「…私が、いるよ…」
「…っ」
「辛い時も苦しい時も泣きたい時も、ずっと…っ」
少し身体を離して、彼の瞳を捉える。
「私が樹のそばにいる…っ」
笑うと少し幼くなるその顔も、
大きくて冷たい手も、
耳に通る低い声も、全部。
私だけのものであってほしいと、何度も願った。
「…好き、」