ByeBye
彼はゆっくり唇を離し、そして私の頬に優しく触れた。長いまつげに、すこし色っぽい瞳が私を捕らえる。
「……どうして、」
ようやく開いた口から出た私の言葉は驚くほど冷静だった。
「……ごめん、」
ぱっと視線を逸らしうつむいた彼は、消えそうなくらい細い声で謝った。その声が、私の心を苦しくさせる。…どうして彼は謝っているのだろう。
「有那、…早く彼氏、作って」
…どうして彼は、そんな悲しい顔でそんなことを言ったのだろう。
"私は樹が好きだから、樹と付き合いたい"
その言葉を、喉の奥にしまって。
「……うん」
私は、そう呟くしかなかった。