ByeBye
「…も、もしもし」
「…有那、いまから会えない?」
耳元で聞こえる低い声。その声は、この間と何も変わらない。けれど、このタイミングでの樹からの電話には、どこか嫌な予感がした。
ここで「いいよ」と言ったら、もう樹とは会えないような気がしてならない。
だけど、私が"親友"という立場に縋って逃げているのは紛れもない事実。あの日のキスの意味だって、私は何も聞けていない。
「…いいよ、」
私は小さく呟いた。
私たちは、近くの公園で待ち合わせることになった。ばくばくと音を立て続ける心臓は一向に鳴りやまない。これから会う彼に言われる言葉への準備すらままならない。
…いやな予感が的中しないでほしいと、願うばかりだった。