ByeBye
あの後、どうやって帰路についたかなんてわからない。
だけど、彩羽が「…やっぱり忘れようよ、」と別れ際にそう言ったのだけは、鮮明に耳に残っていた。
家に着いてすぐ、フラフラと部屋にむかってベッドに身を投げる。
彼が今どうしてるかなんて私には関係ない。彼女がいようが、別れていようが、ホストをしていようが、私と彼が交わることなんてない。
────…そう言い聞かせてきたのに。
忘れようとしたときに、いつも彼は姿を見せる。この3年で、樹を想って得られたものはなにひとつなかった。
新しい恋を探すには絶好の機会だった今日。
…どうしていつもこうなのだろう。
馬鹿みたいに樹が好きな自分に嫌気が指す。いつまでも彼を引きずっている自分が大嫌いだ。
顔を埋めていた枕がじわじわと濡れていく。
樹を想うことは、こんなに辛い。
私にはどうすることもできないのに。
それでも、樹を好きじゃない自分が想像できなかった。