ByeBye
「馬鹿だよな。わざわざ金かけて俺に会いたいって言うの」
「…、樹」
「店じゃ足りないんだってさ。その代わりたくさん貢いでくれるから、俺はお礼をしてるってわけ」
「…もう、いいから、」
「俺がいつも何考えて女の相手してるか教えてあげようか?」
「や、…いいっ」
────"馬鹿な女。"
彼は、そう呟いて蔑んだように笑った。
「最低、って思った?」
樹から返ってきた言葉に思わず顔を上げる。ふいに交わった視線。
だけど、それは私の知ってる優しい彼の瞳ではなかった。目が合ってるはずなのに、樹の心はそこにないような気がしてならなかった。鋭く冷たい視線が、私の胸を締め付けた。
「…思わない、っ」
膝の上でぎゅうっと握りしめた拳に力を入れる。私は彼の言葉に必死で首を振り、彼を肯定した。きっと何か理由があったのだ。じゃなかったら樹はこんなことしない。だから────…
「変わんないね、有那は」
「…え、」
「でもさ、有那。俺は有那のそういうとこ────…すっげぇ嫌い」