ByeBye
"会いたくなかった"なんて。私だって、こんな形で会いたくなんてなかった。
忘れたくて、忘れたくて。
だけど、そう思えば思うほど必死に消そうとした思い出も、嫌ってほど鮮明になって。
この3年で樹のために泣いた回数なんて、数え切れないのに。
「…泣くくらいなら、」
樹は少し乱暴に私の涙を親指でぐいっと拭うと、そのまま頬に右手を滑らせて、言った。
「───俺の相手、してよ」
ぴたり、涙が止まった。彼の言葉の意味が理解できない。
「…な、に言って…」
「…どんだけ一緒にいたと思ってんの?有那の考えてることくらい、わかる」
「…っ、」
「それに、有那は顔に出やすいから」
ドクン。心臓がうるさくなる。
私の気持ちに気づいているからこその言葉だろうか。必死になって隠してきた想いは、全部バレバレだったのだろうか。
そんなことを考える私に、樹は言葉を続けた。
「会いたいなら、店でいくらでも俺が相手してあげる」