ByeBye
「…自分が何言ってるかわかってる?」
冷たい声が耳に響く。
「…っわかってる」
「それがどういう意味かも…わかって言ってんの?」
樹の問いに、コクンと小さく頷く。自分がどれほど馬鹿なことを言ってるかなんて、嫌ってほど感じている。
俯いて顔をあげない私に、樹は小さくため息をつくと耳元に顔を寄せて…低く囁いた。
「──22時。この店に来て」
「…え、」
「…じゃ。学校、頑張って」
そう言って彼はカタン、と席を立つと、私の返事を聞かないまま、ぽんと頭を軽く叩いてパン屋を出ていった。
手に握らされた名刺には、『club Laplace(クラブ ラプラス)』と書かれている。
…ここが樹の働くお店…。
私は名刺をぎゅっと握りしめ、完全に止まった涙の跡をぬぐいパン屋を後にした。