ByeBye
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その後の学校なんて、私は抜け殻のようだった。
教授の話は全部抜けていくし、友達の話も聞けたもんじゃない。頭の中では一日中、樹に囁かれた言葉だけが延々と繰り返されていた。
21時55分。
私は、『club Laplace』と書かれたお店の前にいた。
今日ほど時間の経過が遅かった日はないだろうってくらい長かった一日を終え、私はひとり、夜の街に繰り出していた。この時間に繁華街に来ることはまずないので、私は内心おびえていた。
ホストクラブがどういうところなのか、一般レベルでは知っている。
お金がないとお酒は飲めないし、並大抵の額を財布に入れて行く場所でもないことくらいはわかっていた。バイト代の一部をコツコツ貯めていたけれど、今日はそのうちの10万円をおろしてきた。
樹と私が住む世界が違うことはわかっているけれど、それでもせめてもの私の悪あがきだった。洋服だって、いつもより薄いレース生地の、肩が露出されているものを選んだ。場違いだって思われたくなかったのだ。
…よし。入るぞ。