ByeBye
扉を開けると、中には暗い店内を照らすようにお洒落なライトがいくつもありキラキラと輝いていた。
このお店で働くホストの人たちがずらりと並び、眩しいくらいの笑みを浮かべてお役さんを歓迎している。もちろん、私もその対象だった。
私の手を引いたまま店内に入った樹は、他のホストのひとたちに「おつかれ」なんて言いながらどんどん中に進んでいく。
周りからの視線が痛い。名前を呼んでも、樹は返事をしてくれない。どうしたらいいものかと考えながら、樹に身を任せながら歩いていると、ふと後ろから声がかかった。
「──イツキさん!」
その声に、ようやく樹が立ち止まる。
「ああ、蘭(らん)」
「この子ですか?言ってたの」
蘭と呼ばれた彼は、にこにこしながら樹に話しかける。すると樹は、「探す手間が省けたわ」と言って私の手を離した。
「VIPに案内しといて。すぐ行くから」
「え?マジすか、了解っす」
樹はそう言って、プライベートと書かれた部屋に入って行ってしまった。状況もうまく呑み込めないまま、私は私はVIP席とやらに案内されることになった。