ByeBye
翌日。
学校が終わり、時間より早く駅についてしまった私は、トイレの鏡の前でにらめっこをしていた。
前髪大丈夫かな。いつもより少し丁寧に化粧をしたけど崩れてないかな。
…濃くないよね?…緊張するなあ。
なんてらしくもないことを考えながら前髪にくしを通す。
樹、またかっこよくなってたりするかな。
優しくてムービーメーカーで男女問わずモテていた彼。中学生の時も、彼が告白されている現場は何度も見かけたことがある。
けれど不思議なことに、どんなに可愛い子に告白を受けても彼は誰も彼女にしなかった。「彼女ほしい」などと時々ぼやいていたことは確かなのに、そのくせ告白を断り続ける彼が不思議で、私は1度だけ、樹に聞いたことがあった。
『なんで彼女つくらないの?』
『今はいらないから、かな』
『…そ、っか。………もったいないね』
『んー。まあ、有那といるほうが楽しいし』
きっとこの言葉に深い意味なんてないだろうけど、私にとってそれがどれだけうれしい言葉だったかなんて、彼はこの先も知ることはないのだろう。