ByeBye
気づけば、中途半端に脱がされた服も、下着も、全部剥ぎ取られていた。優しく…それでいて激しく愛撫する彼が、今だけは私のものなのだと錯覚を起こしてしまう。
この行為は、どれだけ悲しい幸せなんだろうか。
私の目から、どちらともとれない涙がポツリ、ポツリと零れ落ちた。泣いてばかりの私は、うざいと思われているかもしれない。そう思っても、やっぱり涙はあふれるばかり。
「…っ、樹……っ好、」
き。
ハッとなり、言いかけた言葉を慌てて飲み込む。幸い、樹には届いていなかったようで心から安堵する。
"好き"なんて、1番言っちゃダメな言葉だ。
言ってしまったらもう終わり。樹とは、もう一緒にいられない。それだけは、どうしても避けたかった。
樹が、私が本当はこんなにずるくて汚い感情を持って抱かれていると知ってしまったら。
きっと、今と同じようには優しくしてくれないだろう。
「…いっそ、全部壊れちゃえばいいよ」
繋がる前に、樹は確かにそう言った。
だけどそれと同時に激しくなった行為に私の思考は完全に止まった。そんなこと考える暇もないくらい、確かに私は彼の熱に抱かれていた。