ByeBye
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行為の後。ベッドにぐったりする私と、そんな私の髪を掬い上げるように撫でる彼。
今は何時なのだろう。待ち合わせが22時で、そこから1時間は蘭さんといたから───…日付を超えていることはたしかだろう。
「有那」
樹が、優しい声で私を呼んだ。
「……店には、もう来ないで」
「…え…」
「…有那は無理だから」
それだけ言うと、樹はまた首筋に顔を埋めた
「…ん、っなんで…、」
「…なんでも」
さっきの言葉も、今の言葉も、…3年前のキスの理由も。時を追うごとにわからないことが多くなっていく。
それでも私は、幸せだった。
知らない方がいいことだってあるんだって言い聞かせて、私は言葉を呑み込んだ。
薄暗い部屋には、2人分の呼吸だけが聞こえていた。