ByeBye
次の日の朝。
樹は私を駅まで送ってくれた。
本当は、昔と変わらず「家まで送る」と言ってくれたのだが、これ以上一緒にいたらきっと離れたくなくなってもっと、もっと、って樹を求めてしまいそうだと思った私は、「ここまででいい、」といって樹をの主張を押し切った。
「…じゃあ、気を付けて」
「…うん」
彼に小さく手を振り踵を返す。重い足を引きずりながら樹との会話を思い出す。
帰り際、彼は1度も「また」とは言ってくれなかった。
「店にはもう来ないで」と言われてしまったので、彼にお金を払って会うことすら私は許されない。
きっともう、私と彼が会うことはないのだと、心のどこかで気づいている自分がいた。
また今度はもう来ない。
“馬鹿な女”のまま、私は終わるんだ。
────もう二度と、私と彼は交わらない。
私はひとり、届くことのない涙を流した。