ByeBye
少しの沈黙が流れたあと、ようやく彼が口を開いた。
「…ごめん。急に呼び出して」
「…ううん、暇だったし大丈夫だよ」
「日向さんに、どうしても確認したいことがあって」
私を苗字で呼ぶ人はこれまでの人生であまりいなかったので、どこか違和感を感じる。私はカフェオレを一口含み、彼の言葉を待った。
「…単刀直入に聞くけど」
「うん…?」
「───水原樹とはどういう関係?」
「…え?」と声を洩らした時。タイミングが良いのか悪いのか、春川くんが頼んだホットミルクティーが運ばれてきた。
「ありがとうございます」と彼が小さく頭を下げる。
私は思考が止まったまま、春川くんを見つめることしかできなかった。
春川くんはホットティーにミルクを注ぎながら、私の顔を覗き込む。まるで、表情の変化をくみ取っているかのようだった。