ByeBye





彼女の纏う雰囲気に怯えながらも、案内されるままにリビングに足を踏み入れる。




『───あいつが抱えてるもの全部、知りたくねえ?』




春川くんの声が脳内でリピートされる。

その声に導かれるようにここまで来てしまったわけだけど、春川くんは帰ってしまったし、今ここにいる彼女とは話したことなんてないから沈黙ばかりが流れてしまう。





彼女は、樹とどういう関係なのだろうか。
春川くんとはどういう関係なのだろうか。

どうして、私に会いたがっていたのだろうか。





理由など、現時点でわかるはずもない。

心臓が飛び出そうなほどの緊張に襲れながら、汗がにじむ手を握りしめ立ち尽くしていると、彼女は「そこ、座っていいよ」と私をソファの方へ促した。
小さくお礼をして、私はそこに腰を掛けた。





「あたしは唯乃(ゆいの)」

「っあ、日向有那です…、」

「知ってる。何か飲む?」




ここへ来る前にカフェで飲み物は飲んだから、喉はそこまで乾いていない。

「あ、大丈夫です」というと、唯乃さんは「そう」と一言で返し、テーブルを挟んだ向かいのソファに腰を下ろした。


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