無気力な高瀬くんの本気の愛が重すぎる。

閉め切られた三組の教室の中から、空気が凍るほどの大きな声が響いた。

誰か、いる……?

そして人の悪口を言ってるっぽい……。

「八方美人だしさぁ、誰にでもニコニコ愛想振りまいていい子ぶっちゃって」

「西河くんもあんな八方美人のどこがいいのかな?」

「体じゃない? 相性がいいとか?」

「きゃはははは、それ最低~!」

ドクン。

待って、この人たちは誰のことを言ってんの。

「穂波って優等生のフリしてるけど、実はそっち系がすごかったりして!」

「言えてる~、男子の前だと態度ちがうもんねっ! 西河くんもだまされてかわいそう~!」

穂波のことを言ってるの?

無意識に握りしめた拳が震えた。

「パパ活とか援交してそうじゃない? 穂波みたいなのが一番たち悪いんだよ」

穂波への誹謗中傷はどんどんエスカレートしていく。

肝心の穂波はというと、気まずそうにわたしから目をそらして前を向く。

「あは、忘れ物取りに戻ったんだけど……中に入りにくくて」

肩を震わせながら、今にも泣き出しそうな表情の穂波。

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