無気力な高瀬くんの本気の愛が重すぎる。
十一月最初の土曜日。
「それでは、出会いにカンパーイ!」
テンションが高い権田くんの掛け声を皮切りに、グラスを交わす音が響く。
狭いカラオケボックスの室内に八人で入るとぎゅうぎゅうだった。
サッカー部の人たちは全員テンションが高くて話し上手。
場が盛り下がることなく、あれよあれよと順番にテンポよく自己紹介が進んでいく。
「環ちゃん、隣いいかな?」
自己紹介が終わって、渡瀬くんが隣にきた。
た、環ちゃん……?
下の名前で呼ばれたことにビックリ。
ノリが軽いというか、合コンってそんなものなのかな。
断ることもできなくて、小さく頷く。
まだ少しこの雰囲気に慣れなくて、緊張でいっぱいいっぱいのわたしを見て渡瀬くんは笑った。
「今日はきてくれてありがとね」
「い、いえいえ」
「ねぇ、なんで敬語?」
「いや、お客さんだったしなんとなく。あはは」
わたしの隣には美保が座っている。そしてわたし、渡瀬くんの順。
あ、あれ?
なんだか距離が近い?
さっきから体の一部が当たってる。
落ち着かないから少し距離を取ると、いつの間にやらまたどこかが渡瀬くんに。
ん?
さすがにおかしい。
不思議に思って渡瀬くんを見たら、にっこり微笑まれた。