無気力な高瀬くんの本気の愛が重すぎる。

な、なんだろう?

「このあとさ、ふたりで抜け出さない?」

「へっ……!?」

スカートの上に置いてた手の上に、渡瀬くんの手が重ねられた。

緊張してガッチガチに固まっていた拳を解くように、指が滑りこんでくる。

その瞬間、ゾワワワワワッと全身に鳥肌が立った。

無理。

やだ。

触られたくないっ。

それでも強引な渡瀬くんに、どう対応すればいいのか経験値が低すぎるわたしにはわからなくて。

ガチガチひとりで震えてた。

み、美保、助けて、お願い。

だけど美保は他の男子や女子たちと盛り上がっていて、こっちにはまったく気づかない。

「ねぇ、環ちゃん」

「ひっ……!」

頬を指先で撫でられて、サーッと血の気が引いていく。

「ふたりで楽しいことしようよ」

「や、や……やめっ」

ううっ。

情けないことに、声が出ない。

「震えちゃって、かわいいね」

寒気がするようなほどの声に、体温が急激に下がっていく。

「慣れてないんだ?」

「や……、あの……っ」

「大丈夫だよ。俺が優しく教えてあげるから」

頬から首筋へスーッと指で撫でられた。

「ふたりきりになれる場所に行こうよ」

高瀬とはちがって、女子を落とすのをゲーム感覚で楽しんでいるような……。

だからなのか、無理だ。

生理的に受けつけない。

怖すぎる。

どうしよう……。

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