無気力な高瀬くんの本気の愛が重すぎる。
──バンッ
いきなり部屋のドアが開いて、その場にいた全員がビックリして固まる。
もちろんわたしも。
目の前には息を切らした高瀬がいて、室内をまさぐるようにぐるりと見回した。
「たまちゃん……っ」
無表情の高瀬はまっすぐにわたしの目を見つめる。
切なげな声で名前を呼ばれて、ありえないほど胸がキュウッと締めつけられた。
高瀬の視線がわたしの手元に落とされた、その瞬間──。
整った顔立ちの眉間にシワが寄せられ、マイナス以上のヒヤッとした空気をまとったのがわかった。
「……触るな」
地響きでもしそうなほどの低い声に、その場にいた全員に緊張が走る。
考えなくてもわかるほど、めちゃくちゃに怒っているんだということがわかった。
「離せ」
スタスタ歩いて渡瀬くんの前まできた高瀬は、強い力で渡瀬くんの手を握った。
「な、なんだよ、お前」
「触るなっつってんの」
高瀬から発せられる言葉はとても冷たく尖っていた。
雰囲気を察知したのか渡瀬くんはわたしから手を離し、距離をあける。