無気力な高瀬くんの本気の愛が重すぎる。

それを確認した高瀬は、フッと表情をゆるめてわたしを見下ろした。

目と目が合ってドキッとしたのもつかの間──。

「帰ろ。送ってく」

ふんわり優しい声をかけられた。

いや、あの、でも……。

展開についていけない。

オロオロしていると、なかば強引に立ち上がらされた。

そして、フワッと肩を抱かれる。

なんでだろ、渡瀬くんのときはめちゃくちゃ嫌だったのに……。

高瀬だとこんなにも安心させられる。

「なんなんだよ、お前。いきなり現れて」

圧倒されながらも、納得がいかない様子の渡瀬くんが高瀬に突っかかる。

高瀬は力強くわたしの肩を引き寄せた。

「たまちゃんは俺のなんだよ」

甘いセリフに思考が停止。

今まで幾度となく思わせぶりなことを言われてきたけれど……。

みんなの前で宣言するように言うなんて。

「手を出すヤツには容赦しないから」

牽制するような低い声に、渡瀬くんは気まずそうに声を詰まらせた。

ザワッと空気が揺れて、でもそのあとすぐにシーンと静まり返る。

威圧感があって気圧されたのか、高瀬に反論する人はもう誰もいなかった。

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