無気力な高瀬くんの本気の愛が重すぎる。

なんでわたしが高瀬のフォローをしてんの?

それに今日の高瀬はいつもの高瀬だ。

急に顔をそらしたり、どこかに逃げたりもしない。

なんだったんだろう、あの高瀬は……。

盛り上げ役の西河とおしゃべり好きな穂波のおかげで、会話は途切れることもなく。

もともと人見知りってわけじゃないし、誰とでもすぐに仲良くなれる高瀬だからっていうのもあるかもだけど。

電車を降りる頃にはすっかり打ち解けていた。

「きゃあ、水族館だぁ!」

「お前、浮かれすぎな」

「いいでしょ、楽しみにしてたんだから〜! 環、行こっ!」

穂波に腕を引かれて入口でチケットの列に並ぶ。

「俺がまとめて買うよ」

順番がくると高瀬がスマホを出して一気にお会計。

出てきたチケットを受け取ってから、ひとり分の金額を渡そうとしたら。

「たまちゃんはいいよ」

「え、いやいや、ダメだよ」

「いいって、こんくらい。安いもんだしさ」

なんて言いながらお金を受け取ってくれなくて。

どうしよう。

戸惑ってたら、穂波にクスクス笑われた。

「いいんじゃない? 甘えておけば」

「えー……」

じゃあランチはわたしが出そう。

これでもバイトしてるし、今日は多めにお金も持ってきた。

< 143 / 229 >

この作品をシェア

pagetop